M&A仲介手数料の相場は「総額でいくらか」で考える

M&A仲介の手数料相場を調べると、着手金や成功報酬といった項目ごとの金額が並ぶ。しかし譲渡を検討する経営者が知りたいのは、成約までに支払う総額と、手元に残る金額のほうだろう。

M&A仲介手数料の総額は、取引金額の1%〜5%程度が相場とされる。ただし最低報酬額が適用されると、実質的な負担比率が5%を超えることも珍しくない。想定する譲渡額が小さいほど、この上振れの影響は大きくなる。

本記事では、手数料の算定に使われるレーマン方式の仕組みを押さえたうえで、想定譲渡額のレンジ別に総額の目安を示す。あわせて、各費用が発生するタイミングと契約前に確認しておきたい点を整理する。

M&A仲介手数料を構成する5つの費用項目

中小M&Aガイドラインに基づく定義では、M&A仲介の手数料は4項目に整理される。具体的には、着手金・月額報酬(リテイナーフィー)・中間金・成功報酬である。着手金は、依頼者との仲介契約・FA契約締結時に発生する手数料である。月額報酬(リテイナーフィー)は、契約後に月ごと定期的に定額で発生する手数料を指す。

中間金は、基本合意締結時等、案件完了前の一定時点で発生する手数料と定義される。成功報酬は、クロージング時等、案件完了時に発生する手数料である。この4項目は、支払うタイミングの違いによって区分されている。

これらに加えて、初期相談時に相談料が発生することもある。相談料は多くの仲介会社で無料に設定されており、一部に有料とする会社もある。

5項目の関係を整理すると、以下の表のとおりになる。

費用項目発生タイミング位置づけ
相談料初期相談時仲介会社ごとの任意設定
着手金仲介契約・FA契約締結時ガイドライン上の定義項目
月額報酬(リテイナーフィー)契約後、毎月定額ガイドライン上の定義項目
中間金基本合意締結時等、完了前ガイドライン上の定義項目
成功報酬クロージング時等、完了時ガイドライン上の定義項目

レーマン方式の仕組みと一般的な料率テーブル

中小企業庁の中小M&Aガイドライン(2024年8月30日)は、レーマン方式を、基準となる価額の各階層に応じた乗じる割合をそれぞれ乗じた金額を合算して報酬を算定する手法と定義している。計算は階層ごとに分けて行い、その結果を合算した金額が報酬額となる。

手順に分けると、次の3段階になる。

1. 基準となる価額を、乗じる割合が定められた階層ごとに区切る

2. 区切った各部分の金額に、その階層の乗じる割合を掛ける

3. 掛けて得た金額をすべて合算する

階層の区切りと、それぞれに乗じる割合として一般的に示されているのは、次の5区分である。

基準となる価額の階層乗じる割合
5億円以下の部分5%
5億円超10億円以下の部分4%
10億円超50億円以下の部分3%
50億円超100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%

乗じる割合は、5億円以下の部分の5%から、階層が上がるにつれて4%、3%、2%と下がり、100億円超の部分では1%となる。表の各行の割合は、その階層に該当する部分に対して乗じるものであり、基準となる価額の全体に対して乗じるものではない。なお、この5区分の数値は、レーマン方式の一般的な料率として示されているものである。

譲渡額別シミュレーション:1000万円台〜1億円台で手数料総額はいくらか

自社の場合にいくらかかるかは、想定譲渡額を料率に当てはめると輪郭が見えてきます。1000万円台から1億円台までのレンジは、いずれも5億円以下の部分に5%という階層に収まるため、乗率は一律5%で計算されます。ここに最低報酬額の下限である500万円を仮に置いて並べたのが、次の表です。

想定譲渡額5%で計算した成功報酬最低報酬額500万円との差請求額の目安
1,000万円50万円450万円下回る500万円
3,000万円150万円350万円下回る500万円
5,000万円250万円250万円下回る500万円
8,000万円400万円100万円下回る500万円
1億円500万円同額500万円
1億5,000万円750万円250万円上回る750万円

読み解き方は2点あります。第一に、1000万円台から8000万円台までは、計算値ではなく最低報酬額のほうが優先して適用されるケースが目立ちます。この帯では、乗率を気にしても請求額はほとんど動きません。第二に、計算値と最低報酬額が並ぶ分岐点が1億円前後にあり、そこを超えてはじめて料率が総額を左右し始めます。

M&A仲介手数料の総額は取引金額の1%〜5%程度が相場とされますが、この相場レンジは、計算値が最低報酬額を上回る規模の取引を前提にした数字として読む必要があります。加えて、最低報酬額そのものが500万円〜2,500万円と幅を持つため、上の表はあくまで下限を置いた場合の目安です。依頼を検討している仲介会社の設定額を聞き取り、自社の想定譲渡額で計算し直すのが確実です。

着手金・中間金・成功報酬はいつ発生するか

M&A仲介の手数料は、成約時にまとめて請求されるものではない。契約から成約までの各段階に分かれて発生するため、どの時点でいくら出ていくのかを先に押さえておくと、手元資金の見通しが立てやすくなる。

flowchart TD
    A["仲介契約・FA契約の締結"] -->|"着手金:0円〜200万円程度"| B["譲渡先の探索・交渉"]
    B -->|"月額報酬:月20万円〜200万円程度"| C["基本合意の締結"]
    C -->|"中間金:成功報酬の10%〜20%程度"| D["デューデリジェンス・最終契約"]
    D -->|"成功報酬"| E["クロージング(案件完了)"]

最初に発生するのが着手金で、仲介契約・FA契約を締結した時点で支払う。相場は0円〜200万円程度とされ、50万円〜200万円程度とする資料もある。

活動期間中にかかるのが月額報酬(リテイナーフィー)である。譲渡先の探索や交渉が続く間、毎月定額で発生する。相場は月20万円〜200万円程度、月30万円〜200万円程度とする資料もある。交渉が長引けば累計額もその分だけ膨らむため、想定期間とあわせて確認しておきたい。

中間金は、基本合意の締結時など案件完了前の一定時点で発生する。金額は成功報酬全体の10%〜20%程度を先払いする形が一般的で、10%〜30%程度とする資料もある。50万円〜200万円程度の定額として設定されるケースもみられる。

そして成功報酬が、クロージング、つまり案件完了の時点で発生する。着手金・月額報酬・中間金はいずれも成約前に支払うことになるため、譲渡代金を受け取る前の資金繰りを確認しておく必要がある。

最低報酬額という落とし穴

成功報酬に最低報酬額が定められている場合、料率で計算した金額がそれを下回れば、下限額のほうが請求額になる。譲渡額が小さいほど、この下限が総額を決める場面は増える。

最低報酬額の相場は500万円〜2,500万円程度である。M&A仲介手数料の総額は取引金額の1%〜5%程度が相場とされるが、最低報酬額が適用されると実質的な比率が5%を超えることも珍しくない。料率の数字だけで総額を見積もると、この上振れを見落とす。

金額の水準は仲介者・FAごとに異なる。中小M&Aガイドラインも、依頼企業が契約前に算出方法を明確に確認する必要があると位置づけている。確かめたいのは、最低報酬額がいくらに設定されているか、そして自社の想定譲渡額では料率による計算と下限額のどちらが適用されるか、の2点である。いずれも口頭の説明で済ませず、契約書の条文として確認しておくとよい。

手数料体系は変化している:まず自社の総額を確認する

ストライクの例では、2021年7月11日より着手金を無償化し、基本合意時の報酬と成約時の報酬による2段階の料金体系に変更した。

着手金・中間金・成功報酬のどれが、どの段階で、いくらかかるかは契約書ごとに異なる。自社の場合に発生する手数料の総額は、個別に確認しておく必要がある。

手数料以外の面でM&A仲介の仕組みに不安がある場合は、M&A仲介の仕組みも参考にしてほしい。

自社の場合の手数料総額を具体的に把握するには、無料相談・譲渡診断(秘密厳守)への申込みが第一歩になる。